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Under the Banner of Heaven
A Story of Violent Faith
著者 Jon Krakauer Doubleday出版(2003年) 座って読んでいるのに、この本を読み終えた時の疲労感はきつい。 ノン フィクションであると余計に重さを感じる。まして雨続きのNY市、今日10月13日はNY市ではユダヤ教の断食の日ヤム キッパーで殆ど何処も休み。先週はロシャシャナ。イスラムラもラマダン中だ。 それならノンフィクションを読まなければイイのだが、私はノンフィクションが好きである。それなら、疲れるなどと言うのは弁解の余地なしですが、しかし疲れた。 Krakauerは、人間が極端な境地に行った時の状態を記録するのが得意である。 1996年5月にエヴェレスト山登頂に成功し、“Into Thin Air”の登山記録を1997年に出版している。標高が高く、しかも酸素が非常に薄く、過酷な天候の中の極端な雪山登山の情況を詳しく鮮明に記録している。この登山に日本人女性の難波さんが参加して死亡している。 他に “Into the Wild”という本を書いている様だが、これを私はまだ読んでいない。 今回、新しく“Under the Banner of Heaven”を2003年に出版した。 この本も、人間が極端な境地に入り込んだ様を記録している。対象は1830年にNY州で誕生したモルモン教、それも原理主義者の実体である。 キリスト教ではあるが、一夫多妻主義を神聖な黙示とする為に、アメリカ史上NY州から追い出されることになり、それ以来、あちこち幌馬車で移動し、遂にユタ州に落ち着いた歴史に触れている。その書き方は、本人は自覚していないとしてもモルモン教がKrakauerの血と肉であるかの様である。 Krakauerはモルモン教の環境で育った人である事を知った。 この本の主題は、極端な原理主義を貫くグループのRon Laffertyが犯した1984年7月24日の殺人事件である。一夫多妻主義、夫への110%従順を強いる環境から逃げ出した妻と赤ん坊を残忍な殺し方で殺害した事件の裏の経過と、主犯が獄中で自殺する前まで続いた面談を詳細に記している。 モルモン教といえば、日本に居る頃に時々見かけた。金髪を何時も端正に整髪し、背広とネクタイで自転車に乗って町の中を走っていた。風呂から上がったばかりの様な清潔感があるが、何故か不気味な、ヘンな殺気を感じたものだ。 信者の数は世界に一千万人以上まで増え、ユダヤ教徒の数より多いそうだ。 問題視される一夫多妻主義は、1890年に中止する事になったが、それ以来、海外に目を向ける方向に進んだ。黒人の牧師も誕生するに至って居る。しかし、この黒人牧師導入を原理主義は受け入れる事が出来ない。それが為に更に別離の距離は大きくなって行く。 原理主義者の数はカナダ、メキシコに3万人、米国西部に10万人以上居る。男は少なくとも3人の妻を持つ事というのが神聖な黙示である為に、母子家庭が多く、原理主義に費やされる連邦、州の生活保護の額は年間6百万ドルである。 一夫多妻主義の他に同性愛を禁じ、更に異常に大切としている点は、肌の色が濃い黒人を悪魔とし、黒人は人間の一歩手前、人間に至らなかった動物で、人間の様に直立して言語を話す動物であり、更に天と地と人間は6000年前に作られたとする。宇宙飛行士が月の表面を歩いたなどは、悪魔が見せかけた仕業で作られたものに過ぎない。これを小さい頃から教会と家庭で教え込まれる。 また、少女が13歳、14歳の時に大人の男性との結婚を取り決められる事が頻繁で、否定すると天罰が下ると教え込まれる。それが州法や連邦法のもとでは年少者への暴行罪、時には近親相姦の罪になる。 また、神から殺せと啓示があったとなると、殺人も正当と見る。この神の啓示が1984年の殺人事件に繋がったと見るのは甘い、とするのは、この主犯を診断した精神病理学医Gradnerと心理学医Goldingの分析である。この分析がまた非常に興味深い。 この懲り様は、次の掲載にします。長くなる傾向にある私の掲載と、ここまでおつきあい下さった事、感謝します。
by nerdy
| 2005-10-14 01:52
| 読書
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